自然栽培や自然農では、水やりをしなくても野菜が自然と育つ。
以前の私は、そんなイメージを持っていました。
水やりをしなくても野菜が育つ畑を目指して、畑に残渣や草を還したり、落ち葉などの有機物を入れたりしながら、畑づくりを続けてきました。
畑を始めて5年。
「水やりは必要ないのか?必要なら、どんな時にどの程度必要なのか?」
この疑問は、ずっと私の中にありました。
実際に2つの畑でさまざまな野菜を育ててみると、水やりをほとんどしなくても元気に育つ野菜がある一方で、水やりをしなければ枯れてしまう野菜もあります。
さらに、同じ畑、同じ野菜でも、植える場所によって水やりの必要性が違うことも分かってきました。
5年間、畑の野菜を見ながら水やりをしてきて、今の私がたどり着いた答えは、
「水やりの必要性は、畑と野菜が決める」
ということです。
今回は、実際に育てている野菜を例に、なぜそう考えるようになったのかをご紹介します。
畑の環境によって、水やりの必要性は違う
現在、私は2つの畑を借りています。
ひとつは、乾燥しやすい真砂土の畑。
もうひとつは、元田んぼで、少し低い場所にある粘土質の畑です。
同じように野菜を育てていても、畑によって水分の残り方がかなり違います。
そして、同じ畑の中でも、植えている場所によって水やりの必要性が変わることがあります。
元田んぼの畑の大豆

元田んぼの畑で育てている大豆は、梅雨明けから約1か月、ほとんど雨が降りませんでした。
その間、水やりをしたのは1回だけです。それでも、大豆は元気に育っていました。
ただ、花が咲く時期になると話は変わります。
大豆は開花から莢がつく時期に水分を必要とするため、花が咲く前後には、しっかり水やりをしています。
「水やりをしなくても育つ」ではなく、その時期の畑の水分と、野菜が必要とする水分のバランスを見ることが大切なのだと感じています。
乾燥しやすい真砂土の畑では、水やりなしでは厳しい
一方、乾燥しやすい真砂土の畑では、水やりなしで野菜を育てるのは難しいと感じています。
以前は、水やりをしなくても、野菜がすぐに枯れるわけではありませんでした。
花や実をつけず、なんとか現状を維持しているような状態になることが多かったのです。
ところが、ここ数年の酷暑では、それだけでは済まなくなってきました。
今年はスイカがどんどん枯れていき、オクラもなかなか成長せず、実をつけることができません。
初めて育てているモロヘイヤも、定期的に水やりをして、なんとか生き延びているような状態です。
同じ自然栽培でも、畑が乾燥しやすければ、水やりをしないことが野菜にとって大きな負担になる。
実際に畑を見ていて、そう感じるようになりました。
真砂土の畑のきゅうりは、4日に1回の点滴潅水

同じ真砂土の畑で育てているきゅうりには、4日に1回、点滴潅水をしています。
それでも、日中には葉が少しくたっとすることがあります。
実もついてはいますが、販売用として考えると、もう少し水を与えて、きれいなきゅうりをたくさん収穫したいと思うこともあります。
ここでは「水やりをしないこと」よりも、販売するためにどれくらい収穫したいのかという目的も、水やりを考えるうえで大切になってきます。
家庭菜園なら、多少収穫量が少なくても問題ないかもしれません。
でも、販売するのであれば、収穫量や品質も考えて水やりをする必要があります。
真砂土でも、水路わきのピーマンは水やりなし

ところが、同じ真砂土の畑でも、水やりをまったくしていない野菜があります。
それが、水路わきの日陰になる場所に植えているピーマンです。
このピーマンには、今まで一度も水やりをしたことがありません。
それでも、何度か同じ場所で育てていますが、毎年とてもおいしいピーマンが収穫できます。
一方、別の畝に植えているピーマンは、定期的に水やりをしないと枯れてしまいます。
この経験から、ピーマンには水分が必要だと思っていますが、同じ真砂土の畑でも、植える場所によって必要な水やりの回数は変わることも分かりました。
水路が近いことや日陰になることなど、目に見えている条件だけでは分からない違いもあるのかもしれません。
自家採種を続けてきたトマト

もうひとつ、変化を感じているのがトマトです。
乾燥しやすい真砂土の畑で、何年も種を採り続けてきました。
最初の頃は、本当にトマトが育ちませんでした。
かろうじて少し実をつける程度で、「この畑でトマトを育てるのは難しいのかな」と思っていたほどです。
それが、年々少しずつ育つようになってきました。
そして今年は、酷暑の中で十分な水やりができていないにもかかわらず、大玉トマトもミニトマトもたくさん実をつけています。
自家採種を続けてきたトマトが、少しずつこの畑の環境に適応してきたのではないか。
そんなことを思わずにはいられません。
もちろん、これだけで「自家採種を続けたから乾燥に強くなった」と断定することはできません。
でも、毎年の変化を見ていると、同じ野菜でも、その畑で育ち続けることで変わっていくことがあるのではないかと感じています。
水やりをしていないのに育つ、かぼちゃとズッキーニ
今年、もうひとつ不思議に感じているのが、かぼちゃです。
なんと、1か月以上まったく水やりをしていません。
それでも枯れずに育ち、実までつけています。
建物のわきに植えていて、早い時間から日陰になる場所なので、その影響もあると思います。
それでも、雨がほとんど降っていないのに、いったいどこから水を確保しているのだろうと不思議になります。
そして、きゅうりの隣の畝に植えているズッキーニも、今まで一度も水やりをしていません。
実はあまりつけませんが、株自体は元気です。
きゅうりに与えている水が土の中を移動して、少し水分をもらっているのかもしれません。
これも昨年までは見られなかったことです。
水やりを減らせる畑を目指して
こうして畑を見ていると、「水やりをするか、しないか」の二択ではないように思えてきました。
そういった条件によって、水やりの必要性は変わります。
だから私は、できるだけ水やりをしなくても野菜が育つ畑を目指しながらも、必要なときには水やりをすることにしました。
そのために、毎年たくさんの野菜を育て、収穫後の残渣や草を畑に還し、落ち葉などの有機物も入れています。
微生物が暮らせる環境をつくり、土に有機物を増やしていく。
そうすることで、少しずつ水を保てる畑になっていけばいいと思っています。
今年、昨年まで水やりなしでは厳しかった野菜が育っているのを見ると、これまでやってきたことが少しずつ畑に変化をもたらしているのかな、と感じることもあります。
まとめ
自然栽培だから、水やりをしてはいけない。
反対に、野菜が元気に育つためには、たくさん水やりをしなければいけない。
どちらも違うのではないかなと思うようになりました。
私が5年間、畑で野菜を育ててきて感じたのは、
水やりの必要性は、畑と野菜が決める。
ということです。
乾燥しやすい畑では水やりが必要でも、水分を保ちやすい畑なら、ほとんど水やりをしなくても育つ野菜があります。
同じ畑でも、場所によって違います。
さらに、家庭菜園なのか、販売を目的としているのかによっても、水やりに対する考え方は変わります。
だからこそ、「自然栽培だから水やりをしない」と決めるのではなく、今、畑と野菜がどんな状態なのかを見て、水やりが必要かどうかを判断する。
それが、今の私にとっての水やりです。
そして、水やりを減らすことだけを目標にするのではなく、水やりをしなくても育ちやすい畑をつくっていくことも、これから続けていきたいと思っています。

